7月24日(日)、千葉市動物公園×太田ゆか ”Live Safari from South Africa”<オンラインサファリの第2回目となるトークイベントが開催されました。

第1回目の前回は、サファリガイドとして活躍する太田ゆかさんの案内で広大なサバンナに生息する動物たちに会いに行くツアーでしたが、今回はゆかさんを千葉市動物公園の会場にお招きして野生動物たちをとりまく環境や様々な問題、自然保護区やその周辺で暮らす人々と野生動物たちの関わりなどについて会場には58名の参加者様、オンラインでのご参加18組、ゲストスピーカーの皆様と熱く語り合う会となりました。

その様子を少しだけお伝えできればと思います。

2つの密猟

まずは密猟についてのお話から。

密猟には「組織的密猟」と「地域住民が生活に困ってする密猟」の2種類があり、どちらも深刻な問題となっているのだそうです。

【組織的密猟】

ゾウの牙やサイの角などは、ラオスやベトナムの富裕層の間でインテリアなどのステイタスとして重宝され、サイの角はなんと1本2000万円という高値で取引されていたり、実際の薬効はないにも関わらず漢方だと信じられているため薬として取引するための密猟が後を絶たずに行われています。

こちらは大きな犯罪組織がからんでいるため、実行犯だけを捕まえてもなかなか解決せず難しい問題となっているようです。

象牙やサイの角を持っていることがステイタスという国もあるんですね

現地では、密猟取締部隊が犬を使って密猟者の足跡を追ったり銃声がしないかなどを命がけで見張ったりという対策をしているそうですが、それも万全というわけにはいかず サイなどを安全なところに移動させたり、サイの角を染色して売り物にならなくするなどの様々な工夫を行っています。

サイの角はケラチンというたんぱく質でできており、人間の爪や髪と同じ成分。切っても痛くないので角を切ってしまうという処置も行っています。

参加の方からは「サイの角は何のためにあるのか?なくなって困ることはないのか」というご質問があり、「角がないからといって襲われやすくなるなどということはないけれど、角がオスの強さのバロメーターなので、メスが強いオスを見分けられなくなる可能性はある。できればやりたくないけれど、絶滅させないためにしかたがない方法だと考えている。」との回答が。

「薬効がないことをもっと広く知ってもらう方法があれば」というご意見もあり、それに関しては「効かないと証明することもまた難しい」という現状を話してくださいました。

また、今現在密猟は減ってきているけれど、ゆかさんがガイドとして働いている7年間でサイの数が激減しているというお話もされていました。

【地域住民による密猟】

こちらは地域住民が生活に困って食料として動物を罠にかけて捕るものですが、主に草食動物のインパラやイボイノシシなどがターゲットになっているそうです。

生きるために仕方がなくの行為だけれど、これによって多くの種に多大な影響を与えてしまっているという現状が…。これにはコミュニティを巻き込んでの保護を考えなければならないということでした。

また以前はクラウドファンディングを通して日本の皆さんと保護活動を行ったこともあり、その取り組みはぜひまたやりたいとお話してくださいました。

生息地の減少

今、人口増加による都市化により野生動物の生息地が22パーセントも失われています。また、農地拡大などによっても失われていく生息地。アフリカの人口を支えるための農業拡大で日本にいる私たちとは無関係と思いがちだけれど、実は他の国への輸出のための農業なのです。決して私たちにも無縁ではないということを教えてくださいました。

また、道路・鉄道・発電所・空港・柵などができたことにより生息地の分断化も進んでいます。生息地が分断されてしまったため種の偏りができてしまったり、保護区の中の一部にしかない植物が失われてしまったりなど、生態系への影響も出てきているんだとか。

人と動物の暮らすところがすぐ近くにあるため野生動物と人間の軋轢も生まれているそうです。

周辺コミュニティや村の牛、ヤギ、犬などがヒョウやハイエナなどの野生動物の被害にあうことで困った周辺住民が野生動物を殺すために毒を持った家畜の死骸を置いておくのですが、その毒を持った動物の肉を食べてしまったハゲワシなどへの二次被害も出ており、その結果生態系が崩れるという悪循環を生んでいる状態になっているそうです。

そして、乾季のはずなのに大雨が降るなど、ゆかさんの肌で感じる気候変動もあるそうです。今はまだそのことがいいのか悪いのか、この先どのような影響が出てくるのかはわからないということでした。

色々なお話を伺っていく中で会場からもたくさんのご質問やご意見が出ていましたが、チャットの方にも「人間だけのことを考えた世界の仕組みになっているので、ほかの動物達にも思いをはせられるようになると良いと思いました」「貧困家庭が多くいるため生活のためややむを得ず動物たちを犠牲にしている。そのような人たちが幸せでなければ解決できないと感じた」「何か協力できる方法はあるのか」など活発なご意見があがっていました。

チーターの例

チーターの生息数は現在8,000頭以下、過去40年で50パーセントも減っており、生息地にいたっては90パーセントも減っているんだそうです。生息地の分断により遺伝子の多様性がなくなるという問題も抱えています。そこで、遺伝的多様性を守るためや、絶滅したエリアへの再導入として動物を移動させて交配させるということも行っています。現地ではGPS装置を使ったモニタリングをし、ストレス行動を見守るという活動もしているそうです。そうすることで出て行ってしまって事故にあうことや撃たれることの予防にもなるんだそうです。

また、チーターをペットのように売買する違法取引などもあり、子どものチーターが生きたまま違法に売買されるということも行われているんだとか。チーターと触れ合える施設なども南アフリカだけでなく世界各国にあるけれど、そこにいるチーターがどのようにそこに連れてこられたのかなど考えることも大切だと話してくださいました。

そして、最後に教育活動、ワークショップをはじめ保護区が地域住民に還元されるシステムづくりや補償制度、雇用・教育体制(例えばサファリ周辺の町の人をガイドとして雇えるように無償で訓練を行うなど)を整え一緒に環境を守り、一緒に生活も守っていけるような取り組みが実現できれば人間と野生動物との関係はもっとよくなるのではないかとのことでした。

ゲストスピーカーの方からも「保護の観点からの教育活動やコミュニティを巻き込んだ活動は素晴らしいと思いました。」というご意見もいただきました。

お話が盛りだくさんですべてのお話やご質問・ご意見をご紹介することができませんでしたが、野生動物を取り巻く環境は遠い海外のことではなく 私たちひとりひとりが自分ごととして捉え、考えていかなければならない問題なのだと心に刻むきっかけになったのではないでしょうか。

会場には熱心にメモをとる方の姿もあり学びの多いトークイベントとなりました。

皆さん真剣な表情でお話を聞いています

次回は再びアフリカのサファリから生中継!雄大な日の出を一緒に見ませんか?

次回は8月7日(日)の開催となります。開始時間を30分早めての13:00スタートです。

内容は

・サンライズウォッチ
(天候条件により見られない可能性もあります)
・密猟や自然破壊などの実態解説、地域住民と動物との関係
(針金の罠がどうしかけられているか、密猟取締隊のパトロールについて、ゾウの増加とそれにまつわる植生への影響と対策)

次回開催日時:8月7日(日)13:00~15:00

3つの素敵な特典がありますよ。

ご来賓・ゲストスピーカーの皆様

7月24日のご来賓・ゲストスピーカーの皆様のご紹介です。

画像をタップしてご覧ください。

7/24開催 ご来賓・ゲストスピーカーのご紹介

イベントについて

みなさまから頂いた参加費の一部が、クルーガー私営保護区の野生動物保護と、環境保全活動にあてられます。

主催:幕張PLAY株式会社
企画:千葉市動物公園
協力:公益財団法人イオン環境財団